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[書籍] ワーキングプア~いくら働いても報われない時代が来る~

 

おすすめ文

【内容】
本書では、「ワーキングプア(働く貧困層)」という問題について、様々な取材を通して具体的に書いている。
「はじめに」には、「ワーキングプア」の実態を示す重要な数字のクイズが7問。
例えば、「世界でもっとも豊かな国といわれる米国には「ワーキングプア」と呼ばれる人たちがどれくらいいるでしょうか?」
→正解は3700万人。
また、各章の終わりには「ドキュメント「ワーキングプア」①~⑩」として、色々な方を取材し、その方の思い、生活実態を書いている。
以下に各章毎の内容、印象に残った点を挙げる。


第1章 日本の労働者の4人に1人は生活保護水準で暮らしている
・「ワーキングプア」とは、汗水たらして一生懸命働いているのに、いつまでたっても生活保護水準の暮らし(年収200万円未満)から脱却できない人たちのことをさす。日本語の直訳では「働く貧困層」とも呼ばれる。
・この言葉は、1990年代の米国で初めて登場した。資本主義の徹底を是認する米国は、資本主義の弊害ともいえる所得格差の拡大を容認する姿勢をとったために「ワーキングプア」が急増していった。日本でも小泉内閣が米国に追随して規制緩和・民営化を進める過程で、所得の二極化が進展、「ワーキングプア」が徐々に増えるようになったと考えられる。
・働いているのに年間収入が200万円に満たない人たちを便宜的に「ワーキングプア」と呼ぶこととすると、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると2005年は男女合計で546万860人にものぼる。これは、同調査の調査対象となっている労働者の25%に相当し、日本人の4人に1人は「ワーキングプア」に属するということとなる。
・男性労働者の「ワーキングプア」は217万6580人、女性労働者は328万4280人となっており、女性の方が圧倒的に多い。。これは、結婚している女性の場合、夫の収入を補填するために、パートタイマーなどになっているケースが多いためだ。しかし、増加傾向が鮮明となっているのは女性ではなく男性の「ワーキングプア」である。男性労働者の「ワーキングプア」比率は2001年の12.2%から、2005年には14.4%へ上昇し、33万9730人も増加した。
・「ワーキングプア」が増えてきた最大の要因は、日本の企業が正社員の数を減らして、派遣社員や契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイトといった、いわゆる非正社員の数を増やしていることがある。年収200万円未満の人の割合は、パートタイマーで93.2%、アルバイトで87.3%、派遣社員で46.2%、契約社員・嘱託で42.4%と高い割合となっている。
・「ワーキングプア」が増えることの一番の問題は、一度「ワーキングプア」に陥ると、構造的にその状況から脱却することが非常に難しいという点だ。人生には、病気や事故などの予期せぬさまざまなリスクがつきまとうが、「ワーキングプア」に属する所得水準が低い人たちは、こうしたリスクに十分に備えることができない。
・「ワーキングプア」と呼ばれる人たちが増えるのなか、ホームレスに転落する人も出てきている。


第2章 働き盛りの中年家庭を襲う「ワーキングプア」の恐怖
・会社の倒産やリストラなどによって、転職を余儀なくされた中高年層の一部は「ワーキングプア」に陥っている。
・「ワーキングプア」の状況に陥り、生活が厳しくなった中高年男性のなかには、それを苦にして自殺をする者もいる。警視庁の統計による年齢別の自殺者数の推移をみると、1990年代の終わり頃から、40代、50代の中高年層の自殺者が目に見えて増えるようになったことがわかる。2005年の40・50代の自殺者数は12794人で、自殺者総数(32552人)の約4割にも達する。
・中高年の親が「ワーキングプア」になると、その子供も「ワーキングプア」になる可能性が高まる。子供に十分な教育費をかけることができなくなると、就職など子供のその後の人生にも悪影響が及び、「ワーキングプア」の位置が、家系のなかで世襲されてしまう。


第3章 崩壊する日本型雇用システム
・1950年代以降、日本の企業は、大企業を中心に欧米の企業とは異なる独自の雇用システムを採用してきた。それが、いわゆる「終身雇用制度」である。終身雇用制度・年功序列賃金制度がワンセットでうまく機能するためには、①企業が安定的に成長していくこと、②社会全体の人口構成が常に美しいピラミッド型になっていること、が不可欠の条件となる。
・しかし、1990年代以降は、長引く不況の中で、企業の成長がストップしてしまい、業務量が縮小する中で新しい従業員を増やすことができなくなった。また、人口構成の上でも、少子高齢化の急速な進展によって、若年労働力が中高年労働力に比べて豊富という環境ではなくなってきており、年功序列賃金制度の維持ができなくなってきた。
・企業に残った正社員の多くは「働きすぎ」という深刻な問題に直面しており、自分のために使える自由な時間が極端に少なくなってきている。働き過ぎの正社員は、いわば「心のワーキングプア」に陥っていると言っても過言ではない。


第4章 非正社員で働く若者たち
・日本の景気の持ち直しを受けて、マクロ・レベルでみた雇用環境の悪化には歯止めがかかりつつあるが、若年の雇用環境の改善は遅れ気味だ。たとえば15~24歳の完全失業率をみると、2005年度の時点で8.5%と全体の数値(4.4%)を大きく上回っている。現在、日本の若者の約10人に1人は失業者という状態にある。
・企業に雇用されている若年層についても、大きな変化が生じている。それは、正社員からパートやアルバイトといった非正社員へのシフトである。非正社員の多くは、企業内での職業能力の形成・蓄積が難しいため、一生懸命働いても、正社員のような華々しいキャリアを身につけることができない。将来の日本経済を支えるべき若者の間で非正社員が増えていることは大きな問題といえる。
・若年層は、勤め先からの収入が「ワーキングプア」の水準にあっても、「パラサイト・シングル」というライフスタイルをとることで、苦しい生活を強いられるリスクを回避しているといえるだろう。ただし、親が年金生活に入るなどして、このようなライフスタイルが持続不可能になったとき、つまり「パラサイト・シングル」というセーフティ・ネットが崩壊したとき、突如として「ワーキングプア」の問題が表面化してくる恐れがある。
・一度ニートになってしまうと、そうでない人との間に大きな所得格差(生涯所得)が生じる。
・人手不足が発生すれば、若年の雇用問題が自然に解決するとうい考え方は短絡的すぎる。若年雇用については、いわゆるミスマッチの問題が深刻化している。若年層の学力が低下傾向をたどる一方、厳しい競争にさらされる企業が正社員に求める技術・能力の水準は高まっており、スキル面での雇用のミスマッチはかなり大きなものとなっている。


第5章 「構造改革」による自由主義経済と民営化の果てに
・「構造改革」のシナリオには、完全に見落とされてしまった視点がある。それは、社会の「公平性」の確保という視点である。「効率性」と「公平性」は、トレードオフの関係にあって、どちらかを優先しようとすれば、どちらかが犠牲を払わなくてはならない。小泉政権が重視してきた「構造改革」路線は、とにかく「効率性」を優先して、「公平性」については多少の犠牲が生じてもやむを得ないという考えに立脚している。
・機会の不平等をなくし、結果の不平等を誰もが納得して受け入れられるようにするためには、1つ1つの企業が従業員についてきちんとした人事評価システムを確立し、スキル・アップに応じて非正社員から正社員への移動ができる柔軟な体制をつくることが重要なのではないか。



【感想&気づき】
お薦め度:★★★(5段階評価)
昨今の日本では「格差社会」が到来してきたと言われている。自分自身には、そのような実感はなかったのだが、本書を読むことで「ワーキングプア」の実態、そのような層で生活する人々の思いを読んで、ようやく実感することができた。
統計上の数値だけでは、どこまでが問題かを線引きすることが難しいかもしれないが、一番の問題は「ワーキングプア」に陥った場合に、負のサイクルに巻き込まれてしまい、そこから脱することが難しくなってしまうということだろう。労働者本人のやる気がいくらあっても、日々の生活だけでいっぱいいっぱいになってしまう。そこから抜け出せるような環境整備が国には求められるのだと感じた。
自分自身のこととしていうと、日々の生活の裏には、そのようなリスクがあるということを十分に認識し、企業に依存しきらない強さを身につけておくということであろう。日々の生活の有り難味をあらためて実感しつつ、自己の成長にむけた取り組みを継続していきたい。



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基本情報

宝島社新書 − 角倉 貴史

投稿者

smile-coach

最終更新

2008-08-07 07:18:19
 

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